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外国人投資家から見た日本の不動産マーケット

幻冬舎によれば、海外投資家が選ぶアジア太平洋地域で魅力的なマーケットとして東京が2年連続の1位を獲得しています。

2020年の外国人投資家による投資額は1兆3,300億円と2年連続で1兆円を超える人気のマーケットです。

近年、不動産業界には外国人投資家からの問い合わせが増えています。かつて日本は「外国人投資家に厳しい国」として知られており、海外から資金が流入しにくい状況にありました。

それがここ数年でアジアでも人気のマーケットに変貌を遂げたのです。

今回は外国人投資家から見た日本の不動産マーケットの動向について解説したいと思います。日本を内側からではなく、外側から見ることで日本の不動産市場のポテンシャルに気づくきっかけになればと思います。

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外国人投資家に人気の「日本」という不動産マーケット

外国人投資家が海外の不動産に投資を検討する時に日本はよく検討対象になります。

通常、海外の投資家は経済成長の著しい成長マーケットに投資をするものです。日本は世界第三位の経済大国ですが、過去30年間の実質GDP成長率は3%未満にとどまり、人口も急減しています。さらに公的債務はGDPの200%を超えており、世界で最も借金を抱えている国として認識されています。

このように長期に渡る債務問題や過疎化、経済の停滞を抱えている日本が海外投資家にとって魅力的な不動産マーケットに映る理由はどこにあるのでしょうか。長期的な人口問題や不動産価格の下落が続く中で日本の不動産マーケットは外国人に門戸を開くようになりました。

今ではアジアではタイについで外国人が不動産を購入するのに適したマーケットになっています。特に近年では中国を中心とした中華圏の富裕層が東京の不動産を買い漁っています。

また、日本への観光ブームが要因の一つであることは間違いありません。

現在は新型コロナウイルスの影響でインバウンド需要は下火になっていますが、観光庁によれば、2003年に521万人であった訪日外国人観光客は10年後の2013年に1,000万人を突破、2016年に2,400万人、2019年に3,188万人と右肩上がりで増えています。海外で不動産を購入する投資家は観光で日本を訪れてから、物件を確認します。日本は観光立国を目指して、ビザの簡素化を進めてきた結果、「外国人が行きやすい国」となり、結果として投資家を呼び込むことに成功したのです。

外国人投資家が日本の不動産マーケットに投資する時にはアジア新興国と同じような期待、例えば利回り10%や大きなキャピタルゲインは期待していません。

日本は政治、経済、文化ともに既に成熟しており、外国人投資家は「成長」よりも「安定」を求めて、投資をしています。

実は外国人投資家に寛容な日本

日本では外国人に不動産の購入だけではなく、土地の所有権も認められています。

東京で一棟マンションを購入しても、地方都市でマンション群を購入しても、地域や物件の種類に関係なく、土地の所有権について日本国民と同じ権利が認められています。

日本が外国人投資家に寛容であることに驚く外国人は少なくありません。

日本は移民政策に寛容ではなく、あらゆる種類のビザの取得が難しいので、外国人から見て日本は保守的で閉鎖的な国であると認識されているからです。また、他のアジア諸国を見てみると、ほとんどの国では不動産の「購入」のみが認められており、「所有」ができません。例えば、中国やベトナムなどでは長期の賃貸契約の締結しか認められていません。

したがって、外国人投資家が不動産を購入する上で日本はアジアで最も安全な国と言うことができます。政治や経済が安定していて、法的にはあらゆる種類の不動産を所有することが可能なのです。

アジア諸国と比較した不動産関連の税負担

不動産投資でネックになるのが固定資産税です。欧米先進国と比較すると、日本の固定資産税の負担は緩やかなものであると言えますが、アジアには固定資産税がまったくかからない国もあります。例えば、タイヤカンボジア、マレーシアは日本よりも固定資産税の負担が小さくなります。

日本で不動産を所有すると、その資産価値に応じて毎年税金を支払うことになります。支払う税金は2種類あり、固定資産税が1.4%、都市計画税が0.3%、合計で1.7%の税金の負担があります。1.7%という税負担は投資家にとって小さくないコストです。

また、所有する不動産を賃貸している場合には家賃収入に税金が課税されますが、日本に住んでいるかどうかによって、支払う税率も異なります。

日本に住んでいない場合には非居住者の場合、日本人と外国人の区別なく家賃収入に対して一律で15%の税率が課されます。

一方で日本に居住している場合には税率が低くなります。

日本に住んでいる場合には、家賃収入に対する課税は累進課税方式が採用されています。最低税率3.4%、最高税率5.88%と税率はかなり低く、この点は外国人投資家にとって魅力的です。

外国人投資家は日本のどこで不動産投資をするのか

日本は世界でも有数の人口大国であり、1億2千万人の人口を抱えています。そのため、日本には不動産を購入できる地域や場所が豊富にあります。東京や大阪のような大都市から、人口が数十万人程度の地方都市、地方の田舎などさまざまな地域があります。

ただし、外国人投資家に人気の地域は大都市に集中します。特に東京、大阪、名古屋、札幌の4大都市圏が人気の地域です。福岡や那覇などの中規模都市に投資をする投資家もいますが、今のところ大きな割合を占めるには至っていません。

外国人投資家に日本での不動産購入を相談されると、不動産会社は大都市以外で不動産を購入することを勧めないでしょう。それは、「不動産会社にとって利益にならないから」というのもありますが、地方の過疎化が主な原因です。

日本の人口減少の影響を東京や大阪などの大都市が受けるのにはまだ時間がかかりますが、地方都市は既に影響を受けています。人口減少が進むと、将来的な不動産価格は低迷し、キャピタルゲインが期待できません。

逆に東京は外国人投資家であれば誰でも知っている世界最大の都市です。周辺地域も合わせると人口は3,000万人を超え、世界中のどこよりも不動産物件の選択肢があるといっても過言ではありません。

中央部(渋谷区、港区、千代田区)

渋谷区や港区、千代田区は人気の地域であり、全国的に見て不動産価格が高い水準にあります。東京の中で最も発展している地域であり、商業施設、住宅、オフィスなどあらゆる種類の物件の需要があります。これらの地域は人口減少の影響をまるで受けておらず、外国人投資家が高層ビルを一棟購入しても、テナント不足で悩むことがありません。

ただし、東京都心の高級物件は賃貸の利回りが低い一方で、1平方メートルあたり1万ドルを超える税負担があります。

したがって、東京都心であるこれらの地域に投資をすることは必ずしも賢明な選択とは言えません。ブランドや名声を気にする投資家の中にはあえてこの地域を選ぶ人もいますが、そのような投資家は都心に所有する不動産を「トロフィー資産」と読んで自虐しています。

西部(中野区、杉並区)

中野区や杉並区のような西部に位置する地域は不動産投資に最適な場所として知られています。価格は都市部ほど高くなく、都心へのアクセスも良好です。例えば、中野区は新宿まで地下鉄で10分程度にある一等地ですが、都心部の不動産価格の半分で購入できます。

国分寺、武蔵野、昭島など、都心から離れた地域はさらに割安です。これらの地域は東京都心のいわゆる「ベッドタウン」であり、都心で働く人に人気のエリアです。

ただし、懸念点がないわけではありません。

東京の中心部から離れた場所に物件を購入すると長期的なリスクを抱えることになります。人口減少の波が地方から東京に押し寄せた時に最初に影響を受けるのはこれらの地域です。ベッドタウンの入居率が低下すれば、採算が取れなくなります。

東部(中央区、台東区)

中央区や台東区は都心ほど不動産価格が高くないにもかかわらず、新宿や渋谷と比較しても利便性で劣りません。

特に成田空港との往復が多い外国人投資家にとっては、都心と空港を結ぶ最速の交通手段である京成スカイライナーは上野駅が起点ですので、中央区や台東区は魅力的です。上野駅がある台東区は東京都内のどの駅よりも出国に便利であると言えます。

これら2つの区よりは離れますが、江戸川区も人気のある地域です。都心まで20分程度と利便性が高いにもかかわらず、都心と比べると不動産価格がかなり低いのです。

南部(品川区、大田区)

品川区や大田区は東京メトロ沿線の中でもアクセスが良好かつ不動産価格がお手頃であり、魅力的な投資対象です。渋谷区や新宿区、千代田区といった都心部に比べると半額程度で不動産を購入できます。

外国人投資家のなかでも日本に居住しており、頻繁に出張や旅行の機会がある人は、東京駅から羽田空港まで車や地下鉄で行けるので、とても便利です。羽田空港は成田空港についで2番目に大きい空港であり、成田空港が千葉県にあることを考慮すると、羽田空港が近場にあることは魅力的です。

日本で不動産を購入する外国人投資家は羽田空港へのアクセスの良好さと安価な不動産価格を求めて品川区や大田区へ投資をします。

横浜

横浜は神奈川県に位置していながら、東京に投資をしたい外国人投資家の対象として上がります。それは、経済的に横浜が大都市東京に取り込まれているという認識によるものであり、経済的な利便性は横浜であっても享受できると考えているようです。

横浜は東京や大阪に次ぐ都市ですが、不動産価格は東京と比べるとかなり安いです。横浜の地価は平均して1平方メートルあたり25万円程度です。東京の多くの郊外で1平方メートルあたり50万円であることを考慮すると、ほぼ半額です。

これだけ見ると横浜は魅力的な都市ですが、懸念点もあります。横浜は東京や大阪よりも早く人口減少の影響を受けると予想されます。つまり、不動産価格が低迷する時期が早く訪れるのです。ただし、2020年代を通して、横浜の不動産に投資をして収益を上げることは可能でしょう。

横浜は外国人投資家の中でも中国人の富裕層に人気があります。横浜は東京と比べると物価も低く、生活しやすいです。また、横浜中華街もあるので、たくさんの中国人が在住しており、中国人コミュニティに入りやすいのです。

関西(大阪、神戸)

大阪や神戸などの関西圏は日本第二の都市圏であり、京都を加えて「京阪神」と呼ばれているこの都市圏には1,900万人が暮らしています。

日本の不動産市場を海外から見ると30年にわたって継続する弱いGDP成長率や急激な過疎化、周辺を中国や北朝鮮、ロシアなどに囲まれている地政学的なリスク、自然災害のリスクなどがあり、楽観視はできていません。

しかし、日本の不動産市場に投資をすることを決めている外国人投資家にとっては、東京以外では関西圏がベストな選択となります。地方都市のように人口減少によって賃貸需要が早急に消滅することは考えづらいです。

京都

京都は「京阪神」と言われる三大都市圏では最も小さな都市ですが、人口300万人は決して少なくありません。さらに大阪や神戸にも電車で30分ほどで行くことができる良好なアクセスがあります。

京都に投資する外国人投資家はAirbnbの賃貸ビジネスを検討していることが多いようです。日本は国全体として人口減少によって不動産需要が減退する国ですが、インバウンド需要は期待されています。

京都は日本で最も歴史的・伝統的な街であり、これからも多くの訪日外国人が訪れると予想されます。そのため、長期滞在のビジネスマンやリタイアした高齢者よりも、短期滞在の観光客を入居者として見つけることが容易です。

ただし、日本でのAirbnbビジネスは海外よりも規制が厳しくなっており、民泊の運営にホテル免許が必要になっています。外国人投資家であっても免許の取得は可能ですが、規制が海外よりも複雑で骨の折れるプロセスであることに間違いはありません。

外国人投資家の中には単純に京都が好きで投資をする人もいます。京都は日本で最も古風な趣があり、特別な親近感を覚えているようです。そういう投資家は経済的合理性よりも京都で不動産投資をすることを目的としている場合があります。

札幌

札幌は日本最北端の大都市であり、本州とは15kmの海峡隔てられています。しかし、2030年までに本州と札幌を結ぶ延伸新幹線が完成する予定です。これによって札幌から東京、京都、そして日本の他のほとんどの地域まで、はるばる旅行することが可能になります。交通網の整備によって、札幌の物価は短期的・中期的に上昇する可能性があることから、札幌は外国人投資家に注目されている都市の一つです。

また、主に中国人を中心とする外国人観光客が増加しており、地域経済における重要性が増しています。インバウンド需要を取り込みたい外国人投資家が投資を検討しているようです。

ただし、札幌は横浜や関西圏よりも早く人口減少の波が押し寄せるかもしれません。長期的な不動産マーケットの予測は決して明るくなく、外国人投資家が躊躇する理由となっています。

名古屋

名古屋は人口300万人程度の中規模都市ですが、日本で3番目に大きな都市圏の中心です。中京圏は名古屋を中心に、小牧、東海、その他数都市で構成され、人口は約1,000万人です。

ただし、名古屋とその都市圏は、北海道と同様に人口減少が進行中です。また、名古屋は経済的に魅力のある大阪などの関西圏と1平方メートルあたりの不動産価格がほとんど同じです。

東京や大阪のようにグローバル経済の中心地でもなく、札幌や京都のように観光資源も豊富ではありません。そのため、外国人投資家にはあまり人気のない地域となっています。

まとめ:日本は外国人投資家に人気の不動産マーケット

日本は長期にわたるGDP成長率の低迷や激動する安全保障環境、人口減少や過疎化など様々な課題を抱えています。なかでも最も懸念されているのが人口減少であり、日本の不動産価格に長期的に大きな影響を与えると見られています。

しかし、日本に投資をする外国人投資家はそれを承知で投資をしています。長期的なキャピタルゲインを目的とする投資家は東京に集中する傾向にあります。東京は長期的な利益が狙えるだけではなく、賃貸需要やインバウンド需要を取り込むポテンシャルもあります。

今後の日本の不動産マーケットは外国人投資家が牽引するようになるかもしれません。




松下 尚士


【執筆・監修】

RISOREAL(リソリアル)の創業者兼CEO。 工務店、不動産仲介会社、設計事務所を経て独立。 トラブル、優良な取引を目指し日々奮闘中。 これまで不動産エージェントとし、600件以上、請負契約・施工会社の紹介として300件以上の実績をもつ。 現在はInstagram・TikTokを日々更新中。

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